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10-FEET

自らの人生を走り続ける彼らの強い気持ちと溢れ出る衝動

 今年も“京都大作戦”のステージで、その場でしかできない最高のライブを見せてくれた10-FEET。

現状に満足することなく、もがき、必死になり、身を削り、多くの人と出会い、別れ、たくさんの優しさを込めて鳴らされる彼らの音楽は、“生きること”にとても近い温度を感じさせる。

そんな3人が約14ヶ月ぶりにリリースするシングル『その向こうへ』は、シーンの最前線と自らの人生を走り続ける彼らの、強い気持ちと溢れ出る衝動が込められている。手を差し伸べたその向こうには何があるのだろうか?

Interview

「ツアーがなかったら考えることもなかったし、メンバー間の話し合いもなかったし、衝突も結束もなかった。毎回毎回、身を削るくらい燃やしているつもりやけど、それ以上に得るもんばっかりな気がする」

●久々のインタビュー、よろしくお願いします。

KOUICHI:もうわざわざインタビューしに来なくても、想像で書いてもらって僕ら全然大丈夫ですよ。

●3rdマキシシングル『RIVER』(2002年10月)以来、全作品インタビューさせてもらってるから想像で書けるとは思いますけど、さすがにそれは読者に怒られるでしょ。

NAOKI:もう取材終わっていいですか?

●ダメです。色んなところでしゃべり尽くしたと思いますけど、今年の"京都大作戦"はどうでした?

KOUICHI:やっぱりおもしろかった。ちょっと天候を心配してたんですけど、前日に梅雨も明けてめっちゃ晴れたし。

●どの出演者もすごかったですけど、やっぱり毎年トップバッターは素晴らしいですよね。今年はROTTENGRAFFTYとSTOMPIN' BIRD。

TAKUMA:めっちゃよかったですよね。難波さん(難波章浩)とかも、出演者みんな座って観てましたもんね。パンク教室みたいになってた。

●2日目のステージでTAKUMAくんは「負けへんぞ」って何回もつぶやいてたじゃないですか。ああいう状態…要するになりふり構わず必死の状態…でライブができたのは、きっと他の出演者から受けた刺激がものすごく大きかったんじゃないかなと勝手ながら思ったんです。それは今回のシングル曲「その向こうへ」にも通じるマインドだと思うんですが、長年やっていると"純粋さ"や"初心"みたいなものは、本人が意識していようが絶対に薄れるじゃないですか。"京都大作戦"も4回目だし、絶対に1回目とは心持ちも違ってくる。でも他の出演者はみんなその日にしかできないライブをやっていて、それが10-FEETのステージに繋がっていたなって。

TAKUMA:うんうん。

●あと、これは"京都大作戦"に限った話ではないと思いますけど、TAKUMAくんは「風」の"僕は"という歌詞を"僕らは"と替えて歌っていたじゃないですか。今年は東日本大震災があった後だったし…なんか"京都大作戦"で音楽の力に改めて気付かされた気がしたんですよね。

TAKUMA:サンボマスターとかめちゃくちゃよかったですもんね。

●うん、めちゃくちゃよかったです。

TAKUMA:気持ちが乗ってたらやっぱり歌っていいですよね。サンボマスターはすごかったなぁ。"歌やな"って。"やっぱり歌やな"って思ったんです。なんかもう次元が違うっていう感じがして、比べるとかそういうレベルの話じゃなくて、"俺らには何ができるんやろう? とにかく一生懸命やらな!"って。「負けへんぞ」って何回も言うてましたけど、もう必死で、自分を俯瞰的に見て「がんばれ!」って言うてるつもりやったんです。みんなが圧倒的すぎて。

●そうだったんですね。

TAKUMA:今年はフェスっていうか、感覚的には対バンに近い感じ。ガチというか、1 アーティスト1アーティストがあんなに強い感じってあまりフェスではないと思う。でっかい天下一武道会みたいな。

●ストイックな表現をする出演者が多かったということもあると思うんですよ。THE BACK HORNとかPOLYSICSのライブも素晴らしかった。

TAKUMA:そうですね。

●あと、今年は何と言ってもPUSHIM with HOME GROWN。歌の力を思い知らされましたし、更にメッセージもすごく伝わってきた。

TAKUMA:もうすごかった。僕がなんぼ「負けへんぞ」って言うても…。

●負ける負ける。

TAKUMA:アハハハ(笑)。いや、もうみんなすごかったんですよ。毎年すごいですけど、やっぱり皆さんすごいです。周りがみんなサイヤ人で、自分だけクリリンみたいな感じやった(笑)。

●本当にいい刺激を受ける場ですよね。そんな中、14ヶ月ぶりとなるシングル『その向こうへ』がリリースとなりますが、今作はここ最近のシングル曲とはちょっと趣が違うというか。「1sec.」とか「super stomper」、「hammer ska」という最近のシングル曲は瞬発力のあるライブチューンだったと思うんです。対して「その向こうへ」はものすごく人間臭くて、色んな感情がギュッと詰まっているような印象があって。温度とか湿度が違う気がする。

TAKUMA:最初はM-2「淋しさに火をくべ」をシングルにしようと思ってたんですよ。で、作業を進めてたんですけど、そのときに「もう1曲やろうか」となって。スタジオでAメロの歌を鼻歌的に歌っていて、サビは漠然としたイメージだけあって。

●ふむふむ。

TAKUMA:そんな感じでジャムりながら作ってたら、メンバー間でお互いのレスポンスがすごく早くて、みんながイメージしているものが出てきたんですよ。その場で適当にやってる感がすごくシックリきて、「もうこのまま作ってみよっか」って。

●3人のフィーリングがバッチリと合ったと。

NAOKI:ベースも割とスッと出てきましたね。

KOUICHI:ドラムもスッと。

●まあドラムは毎回大したことしてないですからね。

KOUICHI:おい! もう一回言うてみろ!

●この曲はメッセージがすごく強いと感じる反面、歌詞ではあまり具体的なことを歌っていないじゃないですか。でも言いたいことは伝わってくるという不思議な感覚で。もがいているというか。

TAKUMA:歌詞は最近考えてることをそのまま書いた感じなんです。もがいているというより、もっと静かというか。

●静か?

TAKUMA:人が生きていく姿を俯瞰して見て、それをひたすら表現したかったんです。だから"◯◯がどうだ"っていうこととかじゃないんです。人が人生を歩いてるんです。ひたすら歩いている。

●そこに自分自身を投影しているということ?

TAKUMA:そういう部分はもちろんあります。この曲で歌っている情景を例えるなら、人が人生を歩いてて、もちろん夢とか後悔とか、失ってしまった純粋さとかそれを取り戻そうとする気持ちとか…僕がよく歌うことですけど…がバーっと周りにあるんやけど、この曲ではその歩いている人の背中をひたすら見ている感じなんです。周りにはピントが合ってなくてぼやけてて、そのぼやけている色んなものも含めて情景が完成される。…そんなこと考えたのは今回が初めてですけど。

●ですよね。今まではその周りをずっと歌っていたような気がする。

TAKUMA:というか、その人の視点で歌っていたんでしょうね。俯瞰して見ていなかった。今までがあったからこそこういう歌ができたと思うんです。だから自分ではそこまで変化を感じてはいなくて、歌おうとしていることに対して、距離感と視線の方向がちょっと変わっただけという感じ。

●なるほど。M-2の「淋しさに火をくべ」はリズムが速くてアップテンポで、10-FEETの得意とするところというかめちゃくちゃライブ映えする曲ですよね。

TAKUMA:でも最初はゆっくりな曲やったんです。

●あ、そうなんだ。

TAKUMA:それを無理やり2ビートのアッパーチューンに改造して、そしたら最初に作ってたサビが全然合わなくなったから新たに作って、サビが言葉の羅列みたいなこの形になったんです。僕らはもうちょっと部分部分を原色に近い感じに仕上げるバンドやと思ってるんですけど、この曲は全体を中間色のまま仕上げたんです。土臭いまま、ニスを塗らずに終わり、みたいな。そのままでもスピード感とかテンションがあったから、おもしろい曲として成立したなって。

●めちゃめちゃスピード感がある曲だと思うんですけど、ハーモニカが入っていたりとかアレンジも実は細やかで複雑だし、印象としてそこまで速いと感じないんですよね。しんどいのはドラムの人だけかなと。

TAKUMA:ライブではリズムがちょっとずつ遅くなっていくと思います。もう年やから。

●ダメじゃん。

KOUICHI:ライブでは僕がハーモニカを吹きます。

●それ絶対に嘘ですよね。M-3「short story」はどういう経緯で?

TAKUMA:これは「その向こうへ」と「淋しさに火をくべ」が揃った後、レコーディングに入ってからスタジオで作ったんですよ。割とスッとできたんですけど。

●こういう短めの曲もいいですよね。特に今回の「その向こうへ」と「淋しさに火をくべ」は両方とも濃度というか熱が高いから、作品としていいバランスになってる。

TAKUMA:そのことは作っている本人らもわかってたから、ちょっとライトで短めの曲になったんじゃないですかね(笑)。

●2曲ともメインディッシュみたいやから、3曲目に口直しのソルベ入れとこうと。

KOUICHI:アハハハハハ(笑)。ソルベて(笑)。

TAKUMA:ホンマにいいデザートというか、バランスになってますよね。

●ところで11/2のリリース日からツアーが始まりますが、どういうツアーにしようと思ってるんでしょうか?

TAKUMA:うーん、やっぱりツアーが始まったらまた今までと違う感覚になると思うんですよ。だから現時点ではわからへんかな。

NAOKI:ライブに関してはまだまだ色々と試さなあかんなって思いますね。完成されているとも思ってないし。

TAKUMA:しんどいですけど、でもやっぱり早よツアー行きたいんです。ツアーしてるときがいちばん頭使ってるんですよ。ライブのことを考えるし、ライブのことを考えてるときってすごく人のことを考えるし、人のライブを観ても感じることが多いからやっぱり色々と考えるし。ツアー出てるときはいちばんがんばって学ぼうとしてるかな。普段の曲作りではあまりそんな感覚ないですからね。

●そうなのか。

TAKUMA:改めて考えてみると、ツアーがなかったら考えることもなかったし、メンバー間の話し合いもなかったし、衝突も結束もなかった。毎回毎回、身を削るくらい燃やしているつもりやけど、それ以上に得るもんばっかりな気がする。

●今回のツアーも楽しみですね。では中身のある発言をほぼしていないKOUICHIくん、最後締めてください。

KOUICHI:じゃあ何か質問してくださいよ。

●わかりました。…あ、でもよく考えたら、KOUICHIくんに質問すること何もないですね。

KOUICHI:それそのまま書いといて下さい。

interview:Takeshi.Yamanaka

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