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【WEB限定】ライブレポート:“YATSUI FESTIVAL! 2017”

みんなの“好き”が渋谷に溢れかえった充実の2日間

2017/6/17・6/18@渋谷TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-nest / TSUTAYA O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / 7th FLOOR / clubasia / VUENOS / GLAD / SOUND MUSEUM VISION / HARLEM PLUS / LOFT9 Shibuya
 
※出演者一覧は公式サイト
 

【フィナーレ集合写真】PHOTO:SUNAO HONDA


 2017年6/17・18と2日間に渡って開催された“やついフェス”こと“YATSUI FESTIVAL! 2017”。今年で5年目となる本フェスは、渋谷のライブハウスなど12店舗に総勢286組が出演。バンドやアイドルをはじめ、お笑い芸人、タレント、DJ、漫画家、占い師、さらにはグラビアアイドルまで、バリエーション豊かな出演者陣が集結した。渋谷の街を大いに賑わした2日間の模様をダイジェストでレポートする。
 

6/17 (1日目)

【神谷明】PHOTO:Soshi Setani


O-EASTでどこよりも早く会場を沸かせていたのはもちろん、主催者でもあるDJやついいちろう。出演者の楽曲をはじめ、andymori、DREAMS COME TRUE、レキシなど新旧問わず様々な踊れるナンバーをプレイしてオーディエンスを盛り上げていく。すっかり場が温まった頃、声優の神谷明が登場して「キン肉マンGo Fight!」を披露し、高らかに開幕宣言。オープニングだけでも、いかに“やついフェス”がボーダーレスなフェスか分かるはずだ。
 

【渋さ知らズオーケストラ】PHOTO:SUNAO HONDA


最高のスタートダッシュを切った流れの中、総勢20名以上を引き連れて登場から観客の目を釘付けにしたのは、不破大輔を中心とするビッグバンド・渋さ知らズオーケストラ。核となるジャズバンドの周りを、全身白塗りなど様々な格好をしたパフォーマーが百鬼夜行のごとく動き回り、一瞬ここが夢なのか現実なのか分からなくなった。センターで指揮をする不破は、おもむろに煙草をふかし始めたかと思ったら、いきなり四つん這いになったりパフォーマーの女性と抱き合ったりと、何でもありのステージはお祭り騒ぎ状態。かなりのカルチャーショックを食らい、いきなりフラフラにさせられた。
 

【GANG PARADE】PHOTO:清水ケンシロウ


次はSOUND MUSEUM VISIONに移動して、たくさんの声援に迎えられて登場したWACK所属の7人組アイドル・GANG PARADEのライブをチェック。(前身グループの)POP時代の「pretty pretty good」で幕を開けると、オーディエンスは1曲目とは思えないほどの熱量で掛け声と振り付けを始める。その一体感に圧倒されつつ、「どこのライブハウスよりも熱いライブを」と呼びかけて、フロアをさらに盛り上げていく。その後も「FOUL」、「Plastic 2 Mercy」とシングル曲を連発し、全力で駆け抜けた40分。幾度もメンバーチェンジを重ねてきた彼女たちの“それでも前に進んで行く”という決意が見えるような力強いステージだった。
 

【スカート】PHOTO:江藤はんな(SHERPA+)


clubasiaに登場したのは、澤部渡のソロプロジェクト・スカート。エレキギターの弾き語りで披露した「ストーリー」では、透き通るような美しい声が場内に響き渡る。爽やかな楽曲の中で時折見せる、超絶ギタープレイにも心を奪われた。途中、前後のタイムテーブルがアイドルに挟まれていることに触れて、「“スカート”って名前だからアイドルだと勘違いされたに違いない! 今日はアイドルらしく振る舞います」とおどけると、爆笑に包まれる場内。MCの面白さと演奏中の真剣な表情とのギャップで、全員がスカートの虜になったに違いない。
 
満員のO-WESTに姿を現したのは、NONA REEVES。フロントマンの西寺郷太が登場した瞬間、たくさんの歓声に沸き立つフロア。「P-O-P-T-R-A-I-N」でいきなりフロアをディスコへと変えていく。その後も「夢の恋人」、「O-V-E-R-H-E-A-T」などファンキーな楽曲のオンパレードに、O-WESTはノリノリで腰をくねらす人でいっぱいに。その光景は、今が2017年だということを忘れてしまうほどだ。彼らの世界に酔いしれた幸せなひと時は、あっという間に過ぎてしまう。終演後、“もっと観たい!”と思った人は私だけではないはず。
 

【奇妙礼太郎】PHOTO:ハタザワ アキヒロ


すっかり陽も落ちてきた頃、O-Crestでは奇妙礼太郎がとびっきりソウルフルな歌声を響かせていた。ブラックミュージックやロックンロールを根底に感じる極上のサウンドは、まるで音の宝石箱のように気持ち良く耳に飛び込んでくる。彼の特別な声がひとたびメロディーに乗れば、何気ないMCの言葉も一瞬にして歌に変わっていくのだ。即興性の高いライブはどこか原始的で、聴いている者の心を揺さぶり丸裸にしてしまう。とくにミステルズのカバー「よっぱらってる、いつも」は歌詞が身体中に染み渡って、気がつけば涙腺が崩壊していた。
 

【曽我部恵一】PHOTO:正慶真弓


7th FLOORでは曽我部恵一がアコースティックギターの弾き語りで、甘く優しい歌声を聴かせていた。その声に吸い寄せられるかのように次から次へと人が集まり、会場はすぐさま入場規制に。曽我部恵一BAND名義でリリースした「キラキラ!」は弾き語りで聴くと、詞の一言一言に宿るパワーをいつも以上に感じる。さらにピアノの弾き語りで披露した「ベティ」では、声を張り上げて歌う時の迫力に圧倒された。繊細かつ情熱的なステージは、その場にいた全ての人の心を震わしたはずだ。
 

【シャムキャッツ】PHOTO:久保 貴弘


ラストは、シャムキャッツを観るために再びO-WESTへ。「GIRL AT THE BUS STOP」の優しくてきらびやかなサウンドが、身体にス〜っと染み渡っていく。「MODELS」で垣間見えるロックな一面には興奮し、極上のバンドアンサンブルを響かせた「マイガール」ではとろけてしまいそうだった。その音に身を任せていると、1日の疲れがみるみるうちに吹っ飛んでいくよう。とても幸せな気持ちに包まれたまま、やついフェスの初日は終了した。
 

6/18 (2日目)

【マキタスポーツ】PHOTO:久保 貴弘


やついフェス2日目は、duo MUSIC EXCHANGEのトップバッター・マキタスポーツ(band)から鑑賞。4人組のバンド編成で登場したマキタスポーツは、序盤から“お笑い芸人”という固定観念を覆すようなファンキーなサウンドで場内を魅了していく。しかし、ただカッコ良いだけでは終わらない。「若めの人の曲もカバーしようと思う」と言って、Suchmosの「STAY TUNE」をなんと音頭調でカバー。爆笑が渦巻く中「ずっとやってみたかった」とおどける彼は、やはりただ者ではなかった。
 

【LUCKY TAPES】PHOTO:落合 由夏


O-Crestには、LUCKY TAPESが3名のホーン隊を加えた8人編成で登場。最初からキラッキラでお洒落な音空間を生み出し、非現実的な世界へと誘う。美しくメロウなサウンドと高橋海の透明感のある歌声に、ただただ酔いしれるばかり。トランペットを含む3人のホーン隊が奏でるサウンドは、とても贅沢で濃厚な音楽体験をもたらしてくれた。一度この極上体験を味わってしまったら、そう簡単には抜け出せなくなりそうだ。
 

【吾妻光良 & The Swinging Boppers】PHOTO:樋口 隆宏


続いてO-WESTに登場したのは、結成40年近くのキャリアを誇るジャンプブルースバンド・吾妻光良 & The Swinging Boppers。フェスにぴったりの名曲「最後まで楽しもう」から始まると、十数名が演奏する心躍るサウンドに身体は勝手に動き出し、テンションはうなぎ登りだ。吾妻がおぼつかないラップを披露する場面ではそのお茶目な佇まいで、観客との距離も一気に縮める。「やっぱり肉を喰おう」など、オヤジの哀愁漂う歌詞とは裏腹に、長年のキャリアと確かな演奏スキルに裏打ちされたサウンドで至高の時間を創り出した。
 

【SODA!】PHOTO:mika


O-nestに向かうと、浅野忠信率いるバンド・SODA!がリハーサルの段階から全力でパフォーマンスしていた。録音・撮影OKという太っ腹なステージは「楽しく踊ろう!」との掛け声を合図に、ゴリゴリのロックを“これでもか!”と轟かせる。俳優としての顔は微塵も見せず、そこにいたのは、れっきとしたロックンローラーだ。「ふざけた者勝ちだ!」と叫んだ言葉を体現するかのごとく、40分ほぼノンストップで歌い続け、凄まじい熱量を生み出した。
 

【吉澤嘉代子】PHOTO:久保 貴弘


その後はduo MUSIC EXCHANGEに戻り、シンガーソングライター・吉澤嘉代子の元へ。「月曜日戦争」のキュートかつポップなステージに、思わず見惚れてしまう。「タクシーに乗ったことがありますか?」と呼びかけてから始まった「地獄タクシー」では、昭和歌謡的な楽曲にのせて妖艶な一面も披露。セリフのような歌詞は、さながらミュージカルのよう。「1年で今日が1番楽しい!」と言った彼女の気持ちが客席にまで伝染して、ハッピーな空間広がる至福の時間だった。
 

【酒井法子】PHOTO:SUNAO HONDA


O-EASTでは、酒井法子がキラキラの衣装を身にまとって登場。いきなり大ヒット曲「碧いうさぎ」を披露して会場を沸かすと、「やついフェスにキター! マンモスうれピー」と“のりピー語”も飛び出す。途中、遠藤響子をゲストに招き入れて「ダイヤモンド ブルー」をコラボ。2人でステージに立つのは酒井が20歳の時以来数十年前ぶりという貴重な時間を目撃したファンは、大いに盛り上がった。往年のファンはもちろん、若い世代にもしっかりと爪あとを残したに違いない。
 

【集団行動】PHOTO:柳川夏子


この日のO-WESTでトリを飾ったのは、元・相対性理論の真部脩一と西浦謙助率いる集団行動。どこか懐かしさのあるポップなサウンドにのせて、“ぐるぐる巻きにしてやるよ”と連呼する中毒性のある楽曲がクセになる。Vo.齋藤里菜の良い意味で淡々とした歌声が“集団行動サウンド”に溶け込むと、彼女以外では表現できない絶妙なバランスが生まれるのだ。まだ結成数ヶ月とは思えない堂々としたステージで、これからの音楽シーンのホープになっていく予感がした。
 

【フィナーレ】PHOTO:Soshi Setani


ラストはO-EASTで2日間を締めくくるべく、この日最後まで残っていた出演者がステージ上に集結。曽我部恵一をセンターに、彼の作ったやついフェスのテーマソング「月が今夜笑ってるから、ぼくらそっと東京の空を見上げる」を全員で熱唱。曽我部の隣には、常に出演者や観客へのおもてなしを忘れないやついいちろうの姿が。毎年これだけの数の出演者が集まるのも、彼の人望の厚さがあってこそだろう。最後はやついが「来年も来てくれるかな?」と呼びかけ、たくさんの歓声と拍手の中で大団円を迎えた。
 
 “多様性”という言葉はやついフェスのためにあると言っても過言ではないほど、様々な顔ぶれが渋谷を賑わした2日間。もちろん今回紹介したステージは、ほんの一部にすぎない。総勢286組のパフォーマンスは、全てを見尽くすには体が何個あっても足りないだろう。だが1つだけ言えるのは、どこの会場に入ってもみんなの“好き”という気持ちが充満していたということ。それを体感するだけでも、足を運ぶ価値は大いにあるはずだ。この先もずっと、やついフェスが渋谷の街を“好き”で埋め尽くしていってほしい。
 
TEXT:室井健吾
 


 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 

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