優れた音楽性とシーン最強のアンサンブルを武器に目覚ましい成長を遂げ、4月にはニューシングル『In Future』&『MAZE』アナログ盤のリリース、そして5月には日比谷野外音楽堂ワンマンライブを控えているNothing's Carved In Stone。当連載は、同バンドのフロントマン村松が、様々な“表現者”とガチのぶつかり合いを行い、その際に起こる化学反応を赤裸々にレポートしていく村松拓強化プロジェクトである。
村松拓が「会いたい人に会いに行く」というコンセプトのもと、ストレイテナー ホリエアツシ、HUSKING BEE 磯部正文、the band apart 荒井 岳史、アルカラ 稲村太佑、SUPER BEAVER 渋谷龍太、浅井製作所 浅井英夫、宇宙物理学者 小谷太郎という面々と対談を繰り広げてきた当連載、最終回となる今回のゲストはたっきゅんが前々から「最終回はこの人!」と決めていたTHE BACK HORN 山田将司。たっきゅんが惹かれる“山田将司”と、“村松拓”という人間の魅力にググッと迫る受け身の美学最終回、じっくりとご覧あれ。
シングル「In Future」のMVですね。ピンヴォーカルの。
Nothing’s Carved In Stone
「In Future」
僕的には、山田さんとTOSHI-LOWさん(BRAHMAN)のいいところをブレンドしてやろうと思ってたんですけど、全然ならなかった(笑)。
ハハハ(笑)。でも自分が思っているより全然普通だから大丈夫。普通っていうか、かっこいいから大丈夫。
ホントだって。俺だって自分のは観たくないけど、他の人を観ると全然普通だもん。
ハハハ(笑)。拓さんはずっと前から「最終回は山田さんに!」とおっしゃっていたんですよ。
もう最初っから“対談相手は?”と考えてパッと思い浮かぶ人。すごく近いけど…対バンさせてもらったり弾き語り一緒にさせてもらったりしてすごく距離が近くなりましたけど、その都度ステージに上がっていく姿とかでたくさん刺激をくれる先輩で、いちばんリスペクトしてる人なんです。この連載が始まって最初に話したいと思ったんですけど、最初に出てもらっちゃったら僕の中ではオチになってしまうので。
そうですね。最初にTHE BACK HORNを知ったのは20歳くらいのときなんですけど、まだコピーもやっている頃で。仲間の中で、ストレイテナーみたいな編成のバンドでヴォーカルやってるやつが居て、そいつが「THE BACK HORN大好きだ」って。「もうすげぇんだよ、ステージ上で暴れまくって」って。そいつはすげぇ泥臭いやつなんですけど、“THE BACK HORNはそういうやつのカリスマなのか”と。そういうイメージだったんですよね。
そいつからいろいろ教えてもらって聴いたりして“かっこいいな”と思ってて。で、対バンをちゃんとさせてもらうようになって、“山田将司やべぇ!”ってより思うようになったんですよね。
そうですね。俺たちのツアーに出てもらって。で、“あ! 山田将司すげー!”となって。僕とはヴォーカルのスタイルが違うんですけど、それでも、なんていうんだろうな…“もう山田将司でしかない”っていうか(笑)。“これが俺の欲しいものだ”と思ったんですよね。
そのときの裏話をすると、当時は自分の歌とかにも悩んでいたし、“どういう気持ちでステージに向かっていこうかな”みたいなこともまだ悩んでいたんですよね。
そういうときに間近で見せてもらって「拓よお、筋肉はこうなってるんだから、ステージに出て行く前にこうするといいんだぞ」みたいな。それってすごく細かいことなんだけど、向かっていく姿勢…なにが必要かというのを自分でわかっていて、そういうところも全部含めてすごいなと思って。ライブして、打ち上げまで一緒にして、部屋飲みもして。
こうやって、まともに目を見て話せるようになるとは思わなかったですもんね。常に宙空を睨みながら話すようなイメージがあったから。
結構俺はそう思われがちだからね。最近はあまりなくなってきたけど、「近寄り難い」とかよく言われます。俺が拓に会ったときの最初の印象は、“こんなにかわいい顔をしてるんだな”と思ったんですよ。声と顔が全然違うんだなって。
「本当に黒人みたいな声してるな」って、最初に会ったときも言ってて。かっけぇ声だなって。でも会って話してみるとお茶目な面がいっぱいあるじゃないですか。弾き語りとかだとなおさらお茶目さが出てくるというか“たっきゅん節”が出てくる。びっくりしましたね。
それからTHE BACK HORNの“KYO-MEI”に呼んでもらったり、俺らの“Hand In Hand”に出てもらったりして、スタジオで会ったりもして。
「飲みに行ってください」ってお願いしても全然行ってくんないんですよ。
改札で待ってたら飲みに行ってくれるかなと思って。僕はそれくらい慕ってるんですよ。
ずっと言ってくれてたもんね。なかなか忙しいからタイミングが合わないよね。
忙しいですよね。まあ僕もそうなんですけど。なんか、オフの日がオフにならなくないっすか? 喉を使いたくないっていうか。
そうだよね。ツアー中とか、オフはケア日だよね。鍼に行ったり、整体に行ったり、身体を休めて。休めるけど、ならさなきゃいけないし。
いい感じでいってるときは大丈夫なんだけど、ツアー中に1回体調崩しちゃうとどうしようもないからね。俺、最近はもう薬を飲まないようにしたからさ。
※共に喉にいい漢方薬
「ササクール」ってなんか名前聞いてがっかりなんですけど(笑)。
山田さんが「薬止めた」って言ってたから、俺も止めたんですよ。
そうですね。酒は飲みに行けないし、人と話すとやっぱり疲れちゃうし。
まあどうやって自分でストレスためないことをするかだよね。本読んだり映画観たり、風呂に浸かったりとか。
ハハハハ(笑)。僕、ツアー中とかに考え込むやつ観ちゃうと帰ってこれないんですよ。
俺は逆に何も考えないからなんだけど、心配ばっかしちゃうんだよ。1人で居るとずーっと声のチェックばかりしちゃうからさ。
喉のことを考えれば考えるほど回復は遅くなっちゃうから、頭をどれだけ切り離せるかっていうことがいちばん大事っていうか。そのためになんでもいいからするっていう。だから本を読んだり映画を観たり、チャリに乗ってどこかに行ったり。あと、最近は歩いてる。走るのやめたの。
たぶん腕の振り方が悪いのか、俺の姿勢がもともと良くないからなのか、走ると肩と首に筋肉が付くことがわかって。腕を動かすから首の筋肉も使うじゃん。肩とかも。
それで結果的に力が入りやすくなることに気づいて。でもやっぱり身体を動かしていたいから、最近は1時間くらい早歩きのウォーキングをやってるんだけど。
うん。なるべくライブに近いくらいの呼吸で行きたいって思ってるから。
ほう〜。そうか。…こういうところなんですよ、僕が山田さんを好きなところ。
なるほど。肉体的にも精神的にも己を知るというか、ベストの状態を作るというか。
でもそこに行ってくれてる先輩が居るから、そこにめっちゃ行きやすいんですよ。僕も結構こういうケアとか健康に気を使ったりとかしてますよ。
そう? 最近はこれ…(と言ってボトルに入った液体を机に出す)。
これはチアシードっていう種が入ってるんです。ハリウッド女優とかが飲んでるんだけど。
水と、あとホメオパシーっていうものの薬というかサプリというか。ツアー中は絶対にこれ飲んでるから。
いいよ。ルイボスティーはカフェイン入ってないから寝る前もいいよ。“ルイボスティー 栄養”とか“チアシード 栄養”とかで検索したらびっくりするよ。
ライブのときは本編とアンコールの間だけだね。ライブ中だと歯に詰まっちゃうから。
「山田将司、歯にゴマ詰まってるな」と思われちゃいますよね(笑)。
あともう1個紹介していい? これ(※とカバンからケースを取り出す)。
うん。ミドリムシって植物性でもあり動物性でもあるから、栄養の吸収がすげぇいいという。
ハハハ(笑)。何年も前に藍坊主のhozzyと山田さんで対談させてもらったんですけど、そのときに山田さんは「肉を食べない期間を設けてみたら、人間としての攻撃性がなくなってしまったからやめた」とおっしゃっていて。
山田さんは自分のコンディションを良い状態に保つために、いろいろと試されるんですね。
やってますね。肉を食べなくしたのは、精神的には良かったんですよ。消化に血が行かない分、頭がすげぇすっきりして。
でも植物性のタンパク質だけだと…たぶんバランスよく採ってればいいんだけど…なかなか普通の生活だと大変で。俺にはちょっと違うかなっていう感じでした。まあ人に合う/合わないはあるでしょうね。さっきホメオパシーが入ってるって言ったけど、ホメオパシーって、薬じゃないからオリンピック選手とかも使っている人が居るのよ。ウサイン・ボルトも使ってるし、ロックミュージシャンもいっぱい居るんだよね。イギリスの方だといっぱい…王室の人とかも使ってるんだよね。
ちゃんと勉強しないといけないみたいなんだけどね。自然治癒力を高めていくための考え方だから。
だからそこを目指すために俺は使ってるんです。思考というか、ライブ中の感覚とかにもいろいろと関わってくるんじゃないかなって思ってて。やっぱり自分のありのままを出したいじゃん。
自分の憧れがあったとして、その憧れに追いついただけで満足しないじゃん。自分っていうものから何が出てくるのかっていうか、ちゃんと自分と対峙したいというのが俺の課題なんだけど。ライブ中とかまさにそうで。最初に言ってた「In Future」のMVの話じゃないけど、俺から観たら全然拓っぽいけど、あれはどういう風に考えてたの?
いや、僕がたぶん山田さんのことを好きだからだと思うんですけど、思考回路が似ているなと思っていて。誰かの真似じゃダメだなって思うんです。当然なんですけど。でも歌い方でもなんでもそうだと思うんですけど、いちおう自分の中で“ここを通ろう”って道を作ってきたんですよ。“ステージ上ではこういう自分を出していこう”みたいな。
そういうところで、ハンドマイクってまったく経験がないものだったから「やってみるしかねえ!」って(笑)。で、やっぱり初心に帰るっていうか、好きな人とか憧れていた人たちの姿を想いながら、あとは自分らしくやるだけ。今回はそういういう感じだったんですけど(照)。
Nothing’s Carved In Stone
「In Future」
らしさは出てたよ。“◯◯っぽいな”という感じは全然なかった。
でも僕は自分で観て“これなんだろうな?”って思うんですけど(笑)。
でももしそれが整理されていたら、自分の中では“◯◯っぽくなった”と安心していることだから。安心していないということは自分らしいことだと思うから、その感じを保ち続けることができれば絶対にいいと思う。なんでもそうだけど、例えばメロディを作っているときとか、何かっぽかったら安心するでしょ? “キャッチーってこういうもんかな”みたいな。
でも“キャッチーじゃないけど自分らしい”というのは、すごいオリジナリティだと思うし。
変わってきてると思いますね。最近さ、俺、ずっとライブ前にアミノバイタルを飲んでたんだけど、それもやめたんだよ。
そしたら逆にいいなって。アミノバイタル飲んでたら「ウオーッ!」ってなるけど…。
すごく燃える。糖分が頭に行くから、頭も身体もすごく動くんだけど、なんか自分の力じゃないんだよね。自分の力じゃないから、他者的な余計な力で「ウワーッ!」って歌うから、終わった後に余計な疲れが身体に出るっていうか。
自分の力だけでライブをやると、精神的なものも、表現だったりとか、ワンマンとかだったらMCもやるんだけどちゃんと自分の言葉が出てきたりだとか、終わった後もしっかり自分の疲れが出てくるっていうか。だから次の日の疲れの残り方が普通になってきたんだよ。だからアミノバイタル飲むのやめたんだよね。ライブ終わってからプロテインを…添加物が入ってない植物性のプロテインがあるんだけど…それを採るようにして。
そうそう。ライブ中はやっぱり自分をいじめ続けているから、その他ではなるべく身体に対していいことをしてあげたい、っていうだけかもしれないですけど。
自然に、自分が無意識でバランスを取ってるのかもしれないけどね。休みの日の過ごし方もそうだし。
いや、俺も甘いんだよ。自分がダメになってから気づくことはいっぱいあるね。それじゃあ遅いんだけど本当は。
たぶん山田さんもそうだったと思うんですけど、僕も喉の薬をすごく使っていたときがあって。
喉の薬を使ってライブがうまくいくんだったら全然それでいいじゃないかという感じだったんです。でも突然“そうじゃないな”と思うようになって、いざやめてみたらできるんですよね。
うん。意外とね。“自分だけでどうにかできる力が本当はあったのに”っていう感じだよね。
そうそう。余計なブースト回路を積んでるから、余計に負担がかかるし、後でダメになるし。
1回不安になった気持ちも、薬があったら安心するしね。その不安…自分が自分を信じてやれないから薬に…なんかヤバい薬の話みたいだけど(笑)。
俺が前から山田さん好きって言ってたのはこういうことなんですよ。
話を聞いていると、普段の生活が全部ステージに向かっているというか。
そうですよね。ギタリストが「弦切れちゃった」とかドラマーが「スティック折れちゃった」みたいなことが、俺らヴォーカリストからしたら「喉痛めちゃった」なんですよね。アクシデントなんだけど、それを自分からは起こしたくない。最高にしていたい。精神的なところもそうなんですけど、山田さんのそういう姿勢が好きなんですよ。自分の力でコントロールして自分の状態を整えること…そういうことの答えは結構いっぱい日常に落っこちてると思うんですよね。
そういうことを伝えることができるポジションに居るヴォーカリストって稀有だと思うんですよ。TOSHI-LOWさんとかもそうだと思うんですけど、THE BACK HORNとか山田さんって、音楽に対して求めている“かっこよさ”が人間的というか。それはなんかすごく安心するんですよね。
だから月に1回とか言わず、3日に1回くらい飲みに行ってほしいんですけど(笑)。
THE BACK HORNの音楽を聴いているとそう思うんですよ。メンバー4人の人間が見えてくるし。それが僕もほしいんですよね。
JUNGLE☆LIFEで連載始めた頃から、会話の節々に山田さんの名前が出てきていたんですよ。
ずっと思ってますね。“日本語の力すげぇ〜!”と思ったのも山田さんだし。
自分で日本語の歌詞を歌ってて思うけど、自分の精神状態も言葉によってどんどん変わるくらい、そもそも日本語って力があるよね。言霊っていうのは本当にあるなって思うし。昔のネガティヴな感情を爆発させたような曲を歌うと気持ちもやっぱりそうなるけど、その逆もしかりで。確信を持ってメンバーで作った曲や歌詞をライブをやったときの、自分の気持ちがちゃんと上を向いていく感じとか、ちゃんとみんなと一緒にいける感じとか、それをちゃんを実感できるっていうのは、すごい希望だなと思うんだよね。
僕はそれを観てる側にも居ますけど(笑)、すごいって思います。
昨日、栄純(G.菅波栄純)とも話したんだけど、ライブってやってる側が思うほど細かいところは最終的にはどうでもよくなると思うんだよね。もちろんそこから目をそらしてはいけないんだけど、でも「バーン!」という爆発みたいなものとかさ、真っ直ぐな想いや感情の身体の動きがお客さんに伝わったりとか、まあ本当に日本語なんか特にそうだと思うけど…例えば横に好きな女が居たとして、横に居るのに「好きだー!」とは言わないわけじゃん。
だから静かな曲だったり、お客さんの側に寄り添うような曲は、やっぱり横で伝えるように歌いたいし。遠い場所に居る仲間のことを想って歌うのであればそれなりに叫びたいし。その場その場で歌い方がどんどん変わるっていうのが俺は昔からあって。それがおもしろい。
うん、飽きない。結構俺は「ずっと同じことをやれるタイプだな」といろんな人に言われることが多いんだけど、音楽はまだまだやれることがあるし、飽きない。
僕は割と飽き性なんですけど、飽きずにやっていることはたぶん音楽だけなんですよね。
あ、筋トレはまだやってます。今、腹筋は400回くらいできます。
いや、いろいろとセットを混ぜてやるんですよ。横のところ鍛えたり。
歌に対していいとか悪いとかじゃなくて、ただ飽きたという(笑)。今それを聞きたかったのに。筋トレして歌がどうだったのか。
あ、腹筋はやっぱりいいですね。それと体幹を鍛えるのはやめないようにしていて。それで代謝も良くなったし、自分の中の熱の感じというか。身体の中に熱が入ってくる感じは、ライブのときの感覚を確かめられるんですよね。あとやっぱり腹筋が良くて。下っ腹なんですよね。
あ、そうだよね。あまり上を鍛えると良くないらしいね。シックスパックを鍛えたら邪魔になるというか、必要なのは下のほうの、丹田のところだよね。俺も1年半くらい前、すげぇ腹筋つけてたことがあって。そこからなんかもう、喉にすっげぇ力が入るようになって。
俺たぶん、今は悪い方向に行ってるんですよね。俺バカだから(笑)、お腹の見た目がかっこよくなりたい、みたいな方向に行きそうになって。
ハハハ(笑)。ヴォーカリストって精神も含めて身体全体が楽器ですね。
どんなに調子が悪くても、自分を信じてあげなきゃいけないし。だから信じることができるのは強いなって思う。それでたぶんいい方にいけるし、歌も良くなるし、回復力も上がったりする。自暴自棄のときは何してもダメだし。
喉や自分を良い状態に持っていくことを常に気づかっておられるじゃないですか。そこまでしても歌うことは楽しいのかな? って素朴に思ったんですけど。
ああ〜、やっぱり調子いいときは楽しいですね。…っていうか当たり前のことだけど(笑)。
まあ調子いいときは自分が気持ちいいけど、やっぱりライブってお客さんと一緒に作れる時間が楽しかったりするんです。自分の声が100%じゃなくても、いい時間はいくらでも作ることができる。
昔はそれが出来なくて、“自分が100%気持よく歌えてないとみんなも気持よくないんじゃないか”って思ってたから自分が60%とかの日は、ちゃんといい時間を共有できた気がしてなかったんです。でも自分のコンディションはもちろんいいに越したことはないけど、それだけでライブがいいかどうかが決まっていないということに、18年くらいやってやっとわかってきたというか。
最近やっとわかってきましたね。自分の中では何かを諦めているような気がしていて、自分で認めることが出来なかったんですよ。なんか他人任せにしているような気がして、お客さん任せにしているというか。でもそれは、お客さんのことを信用できていなかったのかもしれない。
ちゃんとお客さんのことを信用して、他のメンバーのことも信用していたら、実際に自分が100%じゃなくても、いい時間は作ることができるっていうのをちゃんとわかってきた。不器用ですね、本当にね…。
僕の場合は“なんでライブするんだろう?”みたいな疑問がずっとあったんです。曲がいいとか、俺やメンバーがいいとか、演奏がいいとか、みんな何かを忘れたくてライブに来てるとか…いっぱい理由があるのはわかるんだけど、“結局はなんでライブをやるのか?”という疑問がずっとあって。
すごく特別な時間になるけど、別にどこでも行われていることだし。“何なんだろう?”ってずっと思ってたんですけど、最終的には来てくれた人と俺たち全員が、俺たちの音楽とみんなの気持ちを使って何か繋がったりとか、忘れたりとか…それだけでいいと思うようになって。
本当に細かいことはどうでもよくなってきているんです。例え声が出なかったとしても、僕の歌をみんなに歌わせるくらいの度量っていうか。そういうものがあればおもしろいものを作ることができるんだなっていうのが最近やっとわかってきて。
そうだね。その日だけの、その日にしか出来ない良さが作れるんだよね。俺もこの前やったもん。みんなに歌わせて。
声が出なくてやっぱりその日はヘコんだけど、お客さんを見たらいい顔してたし。
もしかしたら、さっき「なるべく自分のありのままで居たい」と言っていたのは、誰かのせいにしたくないからなんだろうなって思う。“ライブが終わる頃にはみんなをこういう気持ちにさせたい”っていうのが根っこにあるから、それを自分で信じるために、自分らしさを無くしちゃいけないと思うし。そのために、いろいろと身体の中に入れるものを考えたりしてるんだなって思うな。
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