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nano.RIPE

出会いと別れが繋いできた“今”、その先に続く新たな旅の始まり。

結成20周年を迎えたnano.RIPEが、6thアルバム『ピッパラの樹の下で』をリリースする。劇場版アニメ『のんのんびより ばけーしょん』オープニング主題歌である「あおのらくがき」を筆頭に「虚虚実実」や「アザレア」といったタイアップ曲も収録した今作で、リード曲になっているのが「ポラリス」だ。“バンドがこれまで歩んできた道”をテーマに書かれた同曲は、20年の歴史を踏まえた上で新たなスタートも感じさせる不朽の名バラード。良い時も悪い時も経験しながら決して諦めなかった“ぼくら”の旅は、これからも続いていく。

 

「“続きでもあり、また始まりでもある”という気持ちがすごくあります」

●今回の6thアルバム『ピッパラの樹の下で』は結成20周年の記念作品ということで、そういうところも意識して制作されたんでしょうか?

きみコ:20周年の集大成であり、(メンバーが)2人になってから1枚目のアルバムでもあるというところで“気合い”みたいなものは最初からあって。やっぱりこのタイミングで出すことの意味は、すごく大きいと思うんですよ。nano.RIPEとして6枚目のアルバムということで、過去5枚の間にやってきた色んなことも踏まえた作品にしたいという気持ちはありましたね。

●これまでの経験値も踏まえた作品にしようと考えていた。

きみコ:たとえばM-7「アザレア」(※2018年2月にシングルリリース)で取り入れたストリングスのアレンジをM-3「ポラリス」でもやってみたり、ライブの盛り上がりを想定して作った“ザ・バンドサウンド”みたいな曲もあったり、インディーズ時代の再録(※M-8「上弦」/『時空フラスコ』収録)を入れたりもしていて。今まで続けてきたことのどの場面も否定することなく、“それが全部積み重なって今のnano.RIPEがあるんだよ”というアルバムにしたかったんです。

●今作は歌詞でもそういうことを歌っているように感じました。

きみコ:“色々あったけど、今は楽しく音楽をやれているし、この先もまだまだnano.RIPEは続いていきますよ”という印象を残したいなと考えながら、歌詞は書いていきました。アルバム全体として、今までよりも前を向いている感じを出したかったんですよね。

●そういう意味では、リード曲の「ポラリス」が最も象徴的な感じがします。

きみコ:これはまさに20年間の旅をテーマにしていて。バンドのことを歌っている曲ですね。

●この歌詞に出てくる“きみ”は、ファンのことを指しているのかなと思ったんですが。

きみコ:まさにそうですね。ステージに立っている時がずっと幸せだったかと言われたら、そうじゃなかった時もやっぱりあったから。でもそういう時にも、お客さんからもらうものがたくさんあったんです。“きみはぼくに教えてくれた”とか“きみがぼくに与えてくれた”という部分は、本当にお客さんのことだなと思います。

●支えてくれる人がいなければ、20年も活動を続けられないわけですからね。

きみコ:そうなんですよ。メンバーやスタッフも含めて、自分たちを肯定してくれる人たちがいないと、何をやっても精神的に続かないじゃないですか。そういうところは本当にありがたいなと思っています。

●“深い悲しみを知ろう 重なった手に愛の喜びを知ろう”という歌詞は、これまでの活動が良い時ばかりではなかった中でも、前に進んできたことを表しているというか。

きみコ:すごくメロディの美しいバラードなので、きれいなところだけを切り取って書くこともできたんですよ。でも“それはちょっと違うよな”と思って。毎回思うことではあるんですけど、特に今回のアルバムでのテーマも考えた上でそういうところもちゃんとリアルに残そうと思いました。

●バラードをリード曲にするというのも、新しい試みなのでは?

きみコ:そうなんですよ。このアルバムは、そこから始まったんです。

●というのは?

きみコ:まず最初に“リード曲をどうするか?”というところを、ジュンと2人ですごく考えて。いわゆる世に残る名曲って、大体がバラードやミドルテンポの曲が多いと思うんです。ロックでアッパーな名曲もあるけど、その時は一時的にワッと売れて色んなところで耳にしても、10年〜20年後にも頻繁に聴かれるものってそんなにないと思うんですよ。“nano.RIPEもこれだけやってきたんだし、そろそろ後世に残る名曲を作ろう”というところから、今回のリード曲はバラードにしようと決めて作り始めました。

●“後世に残る名曲を作ろう”となると、すごくプレッシャーがかかりそうな気が…。

きみコ:そこまで言っていたので、ジュンはかなりプレッシャーを感じていましたね(笑)。

●ジュンくんが書くことに決まっていた?

きみコ:これに関しては、絶対にジュンだなと思っていて。あたしは今までバラードをあまり書いてきていないし、nano.RIPEのバラードで人気がある曲はジュンが作ってきたものが多いから。だから今回は“ジュンちゃん、頑張って。後世に残る名曲をよろしくお願いします”というところから始まりました(笑)。

●プレッシャーを乗り越えて、ジュンくんが良い曲を作ってきたと。

きみコ:すごく自信がありそうな感じで、この曲を持ってきたんですよ。メンバーもスタッフもすぐに“これで行こう”となって、意外とスムーズに決まりましたね。

●ここ最近のシングルではジュンくんの曲がリードに選ばれることも多いですが、クオリティがどんどん上がっている?

きみコ:そうなんですよね。もちろん20年間の歴史も関係あるんですけど、2人になったことでジュンがいよいよ本気になってきているのをすごく感じるんです。

●ジュンくんの意識が変わってきたんですね。

きみコ:そういうところが変わってくると、日常でもバンドのことを考える時間が自然と増えるじゃないですか。“こういうギターを弾いたらどうだろう?”とか“こういうライブをやったらどうだろう?”とか、バンド全体についても考えるようになったことが曲にも反映されていると思いますね。そこは2人になったことで得られたものだなと思います。

●ちゃんと20年やってきた経験値が活かされている。

きみコ:そうですね。…ちょっと遅かったですけど(笑)。

●確かに(笑)。M-11「夜の太陽(クレセントver.)」は2人になって初めてのツアーで販売された会場限定シングルからの再録ですが、この歌詞には特に当時の心境が表れている気がします。

きみコ:そうですね。バンドが1回そういう状況に陥った時に、決意表明としてこの曲を書いたんです。20年間の中で1つの転機になった時期に出した曲だというのもあって、今回は会場限定でリリースしたものとは違うバージョンで録音したいと思ったんですよね。

●それで今回はこういう形になった。

きみコ:このバージョンを作ってみて“こっちが正解だったんじゃないか”と思うくらい、今回のテンポと雰囲気が似合う曲だったんです。そもそもメロディがすごく美しい曲なので、元からこういうバラードだったと考えて1からアレンジをしてみようという感じで録り直しました。

●“クレセントver.”(※三日月)となっていますが、この他にもM-6「月兎時」や「上弦」など月に関するタイトルが多いですよね。

きみコ:そうなったのはたまたまなんですけど、“月の満ち欠け”って人生みたいだなと思うんですよ。良いこともあれば、悪いこともあったりして。そういうものはずっとテーマとしてあるので、多くなっちゃうんでしょうね。それと20周年というのも、すごくリンクするなと思います。

●20年の中でも、月の満ち欠けのような動きがあった。

きみコ:はい。精神的なことだったり、バンドの立ち位置だったり、色々とありましたね。

●M-13「ステム」の歌詞も、そういうバンドの歩みに重なる内容かなと思ったんですが。

きみコ:これはもう完全にバンドの20年を歌っている感じですね。特にデビューしてからの移り変わりみたいなものを包み隠さず書きました。

●“カラダの一部を失って ココロを何度も失って それでも確かに繋いできたんだよ 鳴り止まないように”というのは、メンバーチェンジのことだったりする?

きみコ:新しく入ったメンバーがバンドにどれだけ馴染んでも、結局は“前のメンバーのほうが良かった”と言う人は絶対にいなくならないと思うんですよ。でもその人が入ってくれなかったら、バンドは息をすることもできなかったというか。一時的にいたような人も含めて、その人たちがいなかったら今ここには繁がっていないんです。そういうことを今回改めて考えましたね。

●今まで参加してくれたメンバーがいるからこそ、今に繋がっている。

きみコ:やっぱりメンバーが抜けた時に、“終わり”を意識したんです。そこでバンドが終わるというわけではなくて、“いつかバンドって終わるんだよな”と思って。でもいつまでも続くものとして当たり前にやるよりも、“いつかは終わってしまうからこそ”という気持ちでやったほうがよっぽど良いものができるんじゃないかなと思ったんですよ。だから今は人生も含めて、“いつかは終わる”ということをちゃんと意識して生きていこうと思っています。

●そういう意識があるから、新しいことに挑戦しようという意欲も湧くのかなと思うんです。今回4人のアレンジャーが参加していることも、その1つの表れでは?

きみコ:まだまだ挑戦していきたいですからね。最初は過去の作品に参加して頂いたアレンジャーの方に、20周年という機会にもう一度やってもらうという案もあったんです。でも結局、「ポラリス」みたいな楽曲は中土(智博)さんが得意だということでお願いしたり、M-4「あおのらくがき」は菊谷(知樹)さんがこういうテイストが得意だということでお願いしたり、“この曲にはこの人が適役だな”という方に依頼することになって。その曲を一番良くしてくれる人とタッグを組ませてもらった感じですね。

●「あおのらくがき」のトロピカルなイントロは、今までにない感じがしました。劇場版アニメ『のんのんびより ばけーしょん』オープニング主題歌ということで、作品のイメージから生まれたアイデアでしょうか?

きみコ:イントロのスティールパンは、菊谷さんのアイデアですね。『のんのんびより ばけーしょん』が(主人公たちが)夏休みに沖縄に行くというストーリーなので、バケーション感は意識していて。でもこれまでの(『のんのびより』シリーズでタイアップした)「なないろびより」「こだまことだま」という前2作の流れも汲んで、ちょっとのんびりした軽快なポップソングというところは残しつつ、そこにバケーション感を加えてみました。

●「上弦」で、声にエフェクトをかけている部分も印象的でした。

きみコ:あれはエンジニアさんのアイデアですね。最初からヴォコーダーをかける想定で歌を録って“良い感じにかけておいて下さい”とお任せしたら、その延長線上で遊んでくれたんです。“やりすぎちゃったかな?”と本人からは言われましたけど、すごく良いなと思いました。

●長くやってきたからこそ、遊び心も出せるというか。

きみコ:エンジニアさんもデビューからずっと録ってくれている方なので、そこの信頼関係もあった上でやってもらったんです。“nano.RIPEのサウンドって、自分たちだけで作っているものじゃないんだな”っていうことを、音源になったものを聴くとすごく感じますね。

●今回の初回限定盤はスタジオ盤とライブ盤の2枚組ですが、レコーディングとライブそれぞれの良さが出ているなと感じました。

きみコ:ライブには(レコーディング上の)技術が使えないからこその、勢いやライブ感というものがあると思うんです。そういうところでライブアレンジとは別物として、CDでのアレンジを考えられるようになったんですよね。昔だったら“ライブで再現できないことはしたくない”と思っていたところから、今は“作品は作品、ライブはライブ”と思えるようになったのも成長なのかなって。

●ライブ自体も進化していることが伝わる音源になっているのでは?

きみコ:やっぱりCDを聴いているだけでは想像もつかないようなものが、ライブにはあると思うから。これまでもライブDVDを色んな作品に付けてきたんですけど、今のnano.RIPEのライブはそこからもうちょっと変化してきているんですよ。今回のライブ盤を聴いてもらって、“今のライブはこんな感じなんだ”というのを体感してもらえたら良いですね。

●今回のリリースやツアーも経て、20周年のその先も見据えているのかなと思います。

きみコ:キリも良いので20周年で1回区切って、またここから始めようという気持ちに自分たちもなっているんですよね。これまでの“続き”ではあるんですけど、20周年が終わったら1回また初心に戻って始めようという気持ちもあって。“続きでもあり、また始まりでもある”という気持ちがすごくあります。

Interview:IMAI

 

 
 
 
 

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